「レモン〇個分」の功罪!? ビタミンCを摂取せよ

スリム教導隊本部

本稿執筆時(2020年4月)、新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるっており、多くの方が亡くなっております。

 

医師でもなんでもない兵卒の身で無責任なことを申し上げられないのは重々承知の上で、同志諸賢とともにいまいちど認識を深めたい栄養素があります。

 

本稿では「ビタミンC」について考察いたします。

壊血病とビタミンC

時は16世紀、フロンティアスピリット華やかなりし大航海時代。

 

スリムの野郎が

「船長ー!
す、スリムの野郎が!」

富と名声を夢見て大海原に帆を広げた船乗りたちを謎の病魔が襲いました。次々と体調不良に見舞われる船員たち。皮膚はただれ、歯は抜け落ち、中には出血が止まらなくなって倒れてゆく者もおりました。

 

海の魔女の呪いか、はたまた腐った水でも飲んだのか。長期航海の疲労困憊に追い打ちをかける奇病は「壊血病(Scurvy)」と呼ばれ、誰もが頭を抱えておりました。

 

航海の長期化がどんどん進んだ一方で、実に200年あまりもの間、壊血病は船乗りたちにとって正体不明の恐怖であり続けたのです。

 

新鮮な食材を摂取しているうちは壊血病にかからないことから、なんらかの食材に壊血病の予防効果があることは薄々わかっていましたが、それがいったいなんであるのかは長い間ナゾとされていました。

 

暗雲たれこめる時代に楔が打たれるのは18世紀も半ば、イギリス海軍の冒険野郎ことジェームズ・クック、それに軍医のジェームズ・リンドによって実施された壊血病対策まで待たねばなりませんでした。

 

アスコルビン酸と

『アスコルビン酸』と
名付けよう

まだ予防医学の概念が一般的でなかった時代に、クックとリンドはさまざまな食品の比較検証を行いました。その結果、オレンジやレモン、ライムなどの柑橘類が壊血病に効果的であることがわかってきました。が、それでも「柑橘類のなにが壊血病に効くのか」の説明はつけられずにおりました。

 

柑橘類の果汁から有効成分が抽出されたのはさらに時が進んで20世紀、第二次世界大戦の足音が迫る1930年前後でありました。1933年にイギリスの化学者ウォルター・ハースが、ついに人工抽出に成功したその物質を「アスコルビン酸」と命名します。

 

「壊血病(Scurvy)にならない酸」という意味が込められた名前が示す通り、ここに400年の長きにわたって船乗りたちを苦しめた壊血病との戦いはようやく終わりを告げました。

 

このアスコルビン酸こそが今日「ビタミンC」の名で知られる栄養成分なのであります。

ビタミンCのはたらき

ビタミンCは身体を構成する皮膚や筋肉、骨などの組織を結合する成分である「コラーゲン」の生成に欠かせない物質です。

 

ビタミンCが欠乏すると体内でコラーゲン生成に支障が生じ、体中の組織がもろくなってしまいます。皮膚はただれ、歯ぐきが弱って歯は抜け落ち、血管壁の強度が落ちて出血が起こります。これが壊血病であります。

 

身体を作っているのは

身体を形づくっているのは

ちなみに高分子のタンパク質であるコラーゲンをそのまま飲んだり食べたりしてもそこまで大きな効果は期待できません。

 

理科で習った通り、タンパク質は消化の過程でアミノ酸までバラバラに分解されないことには小腸で吸収できないからです。そしてアミノ酸まで分解された状態はもはやコラーゲンではありません。

 

コラーゲンをウリにした健康食品も、ある種の経済を生む存在としてはおおいに結構ですが、プラシーボ(思い込み)以上の効果があるかは疑問符がつきます。魚にも含まれるコラーゲンを摂取していたはずの船乗りたちが壊血病に陥ったことを考えれば、コラーゲンだけ摂っててもダメなのは自明であります。コラーゲンが気になるなら摂取するべきはコラーゲンそのものよりもビタミンCなのではないでしょうか。
 

ビタミンCが体内に十分にあれば血管などの組織が正常に形成され、貧血を防ぎ、皮膚のメラニン色素が抑えられます。加えて動脈硬化症や老化の抑制など、さまざまなプラス効果が期待されております。

 

さらにビタミンCには細菌やウイルスと直接戦う白血球を強化するはたらきがあります。風邪やインフルエンザといった病気を患ったときには平常時よりもビタミンCの必要量が増加するといわれております。

 

そう。日々の体調を整え、外見的な美しさを保ち、ウイルス疾病と戦うカギのひとつは、まちがいなくビタミンCなのであります。

1日のビタミンC摂取量はレモン〇個分?

人間は体内でビタミンCを生成することができないので、定期的に外部から摂取する必要があります。

 

では、1日に摂取するべきビタミンCの適正量はどのくらいでしょうか。

 

結論から申しますと、成人の1日のビタミンC摂取目安量は100mg。これは「レモン5個分」に相当します。
より正確に言うとレモン1個の「果汁」に含まれるビタミンCに「およそ20mg」という指標が設定されており、果肉や皮まで合わせるとレモンまるまる1個には100~120mgのビタミンCが含まれます。

 

レモンをまるかじりすることを考えるとけっこうな量に思えますが、案ずることはありません。

 

レモン5個分

レモン果汁なら5個分
まるごとなら1個分

「ビタミンC=柑橘類」でイメージしやすい目安としてレモンが選ばれているだけで、レモンばかりがそこまで特別な存在というわけではないのです。

 

1日にレモン1個を皮までまるごと食べれば目安量を満たすことができるわけですが、そんな無理なことをしなくてもその他の野菜や果物にもレモンに見劣りしない量のビタミンCが含まれています。

 

果物なら同じ柑橘系のみかんやオレンジ、キウイフルーツ、レモンより多くのビタミンCを含むアセロラなど。野菜であればピーマン、ブロッコリー、キャベツなど、意外なところでは緑茶・抹茶にもビタミンCは豊富に含まれております。

 

野菜100gあたり平均25mgのビタミンCが含まれていると考えれば、フツーに野菜の1日の目安量である400gを摂取していれば十分な量のビタミンCが摂取できる計算になります。

 

ただし、現代人は野菜の摂取量が大きく不足しているといわれます。もしも貴官が野菜不足の自覚がおありであれば、食事の際に「1日100mg」の目安を思い出して、ビタミンCの摂取を意識していただきたいと考えます。

ビタミンCの注意点

当スリム教導隊が商売っ気ムンムンの通販サイトであれば、ここで「オススメのビタミンCサプリメントはコレ!」というマーケティングを展開するところですが、そうは問屋が卸しません。

 

いや、問屋さんはよろこんで卸してくれると思いますが、それでは自分が納得できません。

 

と申しますのも、サプリメントや野菜ジュース、栄養ドリンク類で摂取したビタミンCは、野菜や果物を食べて摂取した場合と比べて尿で排出されるまでの時間がものすごく短いことが知られているからです。

 

野菜や果物で

野菜や果物で

野菜・果物に含まれる食物繊維などの成分との食べ合わせが重要だと考えられており、それは残念ながらサプリメントや市販のジュース、ドリンク類では再現できていないのであります。

 

また、長い間「水溶性で過分はすべて尿で排出されるので過剰症はない」とされていたビタミンCにも、不自然な大量摂取によって活性酸素が生成され、それが原因で細胞死を招く可能性が指摘されるようになりました。

 

ビタミンCをウリにする商品のパッケージには「レモン〇個分」という言葉が躍ります。中には「レモン50個分」など、大量のビタミンC含有を謳った商品もあります。

 

壊血病との400年戦争を制して人工的にビタミンCを抽出できたのがおよそ100年前。その反動か、ビタミンCの大量摂取に魅力を感じさせるマーケットができあがっているように思えます。

 

安易にサプリメントやドリンク類に頼ることなく、野菜や果物を多めに食べたり、成分抽出を伴わないスムージーなどで適量のビタミンCを摂取すること。これを感染予防に次ぐ策のひとつとして生活習慣に取り入れ、ウイルス禍を乗り越えましょう。

 

観測評価
  • 大航海時代から続いた壊血病との戦いからビタミンCが発見された
  • ビタミンCは体組織を構成するコラーゲンの生成に不可欠
  • 1日のビタミンC摂取目安量はレモン果汁5個分、約100mg
  • ビタミンCは毎日の食事で適切に摂取する必要がある
  • サプリメントや野菜ジュースではビタミンCが体内にとどまる時間が短い
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