「摂取カロリー < 消費カロリー」を守れば必ず痩せる! というダイエット情報をよく見ます。「カロリー制限」と呼ばれる考え方です。
たしかに中学~高校で習った「エネルギー保存の法則」に照らせばこれ以上ないくらい自明に見える理論ですが、果たして本当でしょうか?
残念ながら当スリム教導隊における「カロリー制限」の評価は「×に近い△」です。
いったいなぜか。
本稿では「食事のカロリー」について考察いたします。
「カロリー」とは
「カロリー」とは熱量の単位です。
加工食品のパッケージやファミレスのメニュー表などに「〇kcal」と記載されているので、目にする機会も多いかと存じます。
人によっては「なんてうっとうしい数字だ」と感じるでしょう。自分も同じであります。アノ数字が与えてくるプレッシャー、なんか学校の成績で親に責められる感覚に似てる気がいたします。
BBY-01 ヤマト副長・真田三佐が大食漢の太田三尉に対して「無駄なカロリー摂取は愚かな行為だからね」と言い放っておられたのが自分事のようにグサッときます。
「カロリー」は食べ物として口から入る「① 摂取カロリー」と、体内で燃焼する「② 消費カロリー」を同じ「kcal」の単位で語れるので、両者をわかりやすく対比する目的で用いられます。
① 摂取カロリー
「① 摂取カロリー」については、1kcalを「1リットルの水を14.5℃⇒15.5℃に上昇させるのに必要な熱量」と定義しております。水槽のような装置で実際に栄養素を燃やして測定したり、最近では専用機器を用いた近赤外線分光分析法と呼ばれる手法などで測定されます。
とはいえ、栄養士さんも評価する食事に対して毎回この測定をおこなっているわけではなく、多くの場合すでに測定された各食材のカロリーを「食品成分表」から引用して計算します。
② 消費カロリー
「② 消費カロリー」は、人が運動した際の呼気を測定して、酸素の消費量を元に「酸素1リットル消費=5.0kcal」と定義します。
仮に運動で100リットルの酸素を消費した場合、
5.0(kcal)×100(リットル)=500kcal
が、消費カロリーとなります。
「① 摂取カロリー」と「② 消費カロリー」を比較して②の方が多ければ痩せるというわけで、①②を制御するのが「カロリー制限」「カロリーコントロール」と呼ばれるダイエット手法であります。
ここまでは特に問題なさそうなのですが・・・
「① 摂取カロリー」には不確定要素が多すぎるという致命的な欠点があり、「カロリー制限」にもダイエットの判断を誤らせる大きな落とし穴があるのであります。
「摂取カロリー」の数字が同じでも・・・
食事の「摂取カロリー」がまったく同じ場合でも、さまざまな要素によって体内での消化吸収は大きく変わってきます。
カロリーの不確定要素
三大栄養素によって違う
食事には人体のエネルギーとなる三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)が含まれます。
各栄養素の1gあたりの熱量は・・・
糖質=4kcal、脂質=9kcal、タンパク質=4kcal
なので「摂取カロリー」を減らそうと思った場合、真っ先にターゲットになるのは脂質ということになります。
つまり「カロリー制限論」に則れば、脂質を減らす方がカロリーを大きく減らせるので、肥満の主因である糖質系メニューの方が「カロリーが低くてヘルシーだ」となってしまうことがあるのです。
これは、ほぼ同量で「具が多く高カロリーな弁当」と「比較的低カロリーだがほぼ米だけのおにぎり」のどちらを選ぶか、という日々の選択肢で間違いを重ねてしまうということであります。
別途「エネルギー充填率120%!?食事の三大栄養素を把握せよ」のレポートにて指摘したとおり、同じカロリーでも体内における三大栄養素の役割はそれぞれ異なります。一般的にダイエットで比率を下げるべきなのは脂質ではなく糖質なのですが、カロリーだけで判断すると、
「しっかりカロリー制限してるのになんで痩せないんだ・・」
「体重は落ちてるけどなんだか体調が悪い・・」
といった事態を招きかねません。
これがカロリー制限の大きな落とし穴である「栄養バランスの乱れ」であります。
真田三佐が食しておられたカロリーメイトのような固形の糧食は・・・ホントにアレだけで大丈夫なんでしょうか。
人によって違う
人は一人ひとりの身体機能が大きく異なります。
個人ごとの基礎代謝、内臓の機能、消化吸収能力、腸内細菌の量・種類、それに生活習慣やストレスの度合いなどなど、ホントにいろんな要因によって、まったく同じ「摂取カロリー」の食事でも人によってまるで異なる結果がもたらされます。
「同じ人間サイズ同士、内臓の能力に2倍3倍の開きがあるなどという話はない」と言いたいところではありますが・・・ノーム隊長、自分にはムリであります。ギャル曽根さんのように、細身なのに大食いを売りにしているスゴイ方々と一兵卒である自分を同列にしてはイカンということですね。ホントにどんな内臓をしておられるんでしょうか。
食べ方・状況・体調によって違う
同じ人がまったく同じ内容の食事をした場合でも、毎回同じ結果にはなりません。
よく噛んで時間をかけて食べたか、糖質より先に野菜を食べたか、その日の運動量はどのくらいか、ストレスで自律神経がやられていないか、前の食事からどのくらいの時間があいているか・・・etc.
同じ「自分」であっても、さまざまな要素によって摂取カロリーのうちどの程度が吸収・同化されるかが大きく変わってきます。これはもう、とても定量的に測定できる数値とは言えません。
カロリー計算における不確定要素は挙げだしたらキリがありません。
各種の不確定要素や「栄養バランスを乱しやすい」という落とし穴の要素を考慮すると、食事を「〇kcal以下」という概数だけでコントロールしようとすることがいかに不毛かがわかります。
以上を踏まえ、スリム教導隊では「カロリー制限」の観測評価を「×に近い△」としております。
比較対象が口に入れる段階の「摂取カロリー」ではなく体組織に同化される「吸収カロリー」であれば、「吸収カロリー < 消費カロリー」を守れば痩せることはできるかもしれませんが、定量的な観測が不可能である以上、気に病んでストレスを増やすだけ損であります。
「カロリー制限」が有効なシーンは
正直に申しますと、自分は一年戦争初期の段階では「カロリー制限」派でした。
「① 摂取カロリー」と「② 消費カロリー」をスマホアプリに記録して、毎日 ① < ② となるように調整しており、この間に4~5kgくらいはスッと落とすことができました。しかし、それ以上はなかなか思うような成果を得られず、体調も優れない時期が1~2週間続きました。
そして、開戦からおよそ1か月で空腹に耐えられなくなってアプリへの登録も計算も面倒になり、リバウンド傾向が見えたところで「カロリー制限」はやめました。
ただでさえ仕事や家庭でストレスを抱えている中で、成果の見えないダイエットにやる気が継続するはずもなかったのです。
それ以降は「食事のバランス調整」や「運動量の増加」を少しずつ総合的におこなう方向にシフトしました。結果、半年で体重20kg減量と、おおむね成功といえるレベルまで達したのであります。
それでも、「カロリー制限」の考え方が有効だと思えたシーンがひとつだけありました。
それは「食べ過ぎにブレーキをかける瞬間」であります。
目の前に「食べたい!」と思うものがあって、それが500kcalだとすると
「コレ食って100%体脂肪に変換されたら500(kcal)÷9(脂質1gあたりのkcal)≒55(g)の脂肪になっちゃうんだなぁ・・」
と考えることで踏みとどまることができました。
実際にはもちろん食べたカロリーが100%脂肪に変換されることはないのですが、無駄な食欲にブレーキをかけるときには有効な考え方でありました。
どちらかというと物事を理論的に捉えるといわれる男性にとって合理的なブレーキになるかもしれません。
「カロリーの数字を『9』で割ったグラム数が体脂肪になったら・・」と考えて、無駄な食欲を克服しましょう。どのみち概数なので『10』で割ってもOKです。
真田三佐には数字のテキトーさをツッコまれそうですが、オムシスの稼働負荷を考えれば平田一尉には許容していただけるものと思います。
ダイエットでカロリー論はあくまで参考程度、「食べ過ぎ抑制のための目安」にとどめるべきと考えます。
- カロリーとは熱量の単位
- 「摂取カロリー」と「消費カロリー」を比較調整するのが「カロリー制限」
- 「摂取カロリー」には不確定要素が多く、正確な計算はできない
- 「カロリー制限」には糖質の比率が高くなる落とし穴がある
- カロリーを意識するのは「食べ過ぎの抑制」には有効