人間が活動のエネルギー源にできる栄養素を総じて「三大栄養素」と呼称します。糖質、脂質、タンパク質の3つです。
これらの概要をおさえることで毎日の食事の質を徐々に変えることができ、結果的にダイエットの効果を大きく変えることが可能になります。
とはいえ最初からすべてを理解する必要はありません。中学レベルの知識だけでも一定の効果が期待できます。
自分自身(いろんな意味で)中学レベルを脱しておりませんが、それでもある程度の戦果を挙げております。
三大栄養素について
三大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)は人体のエネルギー源です。エネルギー以外にもそれぞれに体内で大きな役割を担っています。
いずれも人体が生命活動を維持するために必要な栄養素であり、たとえダイエット中でもどれかを極端に削るのはNGとされています。
日常的にどれかを過剰摂取している場合は適正値までコントロールする必要があります。我われの肥満の主因は「糖質」である場合が多いので「糖質制限」が科学的に正しいダイエットだというのが昨今の主流になっています。
これら三大栄養素以外にエネルギー獲得の手段があるとすれば、自分の知る限りではトニー・スターク氏のように自ら永久機関を開発して胸に埋め込むか、金髪美女の無料キャンペーンでアンドロメダ銀河まで赴いて機械の体にすげ替えてもらう等のきわめて特殊な手段しかないのであります。
ただし後者はそういう安易な手段に対する強烈なアンチテーゼでありました。
それぞれの栄養素について細かく語りだすと1冊ずつ本が書けてしまう分量になるので、本稿ではダイエットに関係する部分の概論に留めさせていただきます。
体内で脂肪として蓄えられやすいのは糖質、脂質、タンパク質の順とされています。この順にそれぞれの概要を見てまいります。
糖質の概要
人体のエネルギーたる三大栄養素の中にあって、糖質の役割はまさしくエナジーソースそのもの。身体を動かすエネルギーであります。
「糖質」は「炭水化物」とほぼ同義に語られることが多いのですが、炭水化物カテゴリに糖質と食物繊維が含まれるので、これらを分けて論じる場合は「糖質」「食物繊維」と明示します。
糖質は分子の大きさによって
- 多糖類(米・パン・麺類、イモ類など)
- 二糖類(砂糖など)
- 単糖類(果糖・ブドウ糖)
に分けられます。
口に含む段階ではどのような形態であれ、消化酵素によって最終的に単糖類のレベルまで分解のうえ吸収されます。
吸収されたブドウ糖は血中を漂い、身体の各所でエネルギーとして活用されるわけですが、食後などのタイミングで余剰が発生します。
いわゆる「血糖値が高い」状態です。
血糖値が高まるとそれを下げるためのはたらきが体内で生じます。
膵臓からインスリンが分泌されて余剰分を一時的な貯蔵形態であるグリコーゲンに変え、200g程度が筋肉に、筋肉に入らなかった分はこれまた200g程度が肝臓に蓄えられます。
筋肉・肝臓のグリコーゲン貯蔵限界を超えた分が今度は中性脂肪に変えられて脂肪細胞に蓄えられるのです。
これが体脂肪であります。
「即座に使われるエネルギー」 → 「一時貯蔵エネルギー」 → 「体脂肪」と順を追って蓄えられていく様子が河川におけるダムに例えられることもあります。実際には川のように一本道な構造ではありませんが。
「けっきょく体脂肪になるとは、なんて迷惑なシステムなんだ」と思うなかれ。
糖質は1gあたり4kcal、脂質は1gあたり9kcalと、同じ重量で2倍以上のエネルギーを保持します。
我われの体脂肪は、糖質として吸収した余剰エネルギーを2倍以上の効率(半分以下の重量)で蓄えることができるという、きわめて優秀なエネルギー貯蔵システムなのであります。
まるでメガ粒子砲のエネルギーCAPです。
体脂肪として大量に蓄えられてしまうのは、必要量を大幅に超えてチャージされたエネルギーまでも律義に貯め込もうとした結果なのです。
「そこまでうまくできてるなら際限なく貯め込まないようになってればいいのに・・」と思いますが、そこは変えようがないのでちょっと置いといて、チャージする量をうまくコントロールしたいところです。
脂質の概要
脂質の重要な役割は「全身37兆個の細胞を覆う細胞膜の材料」であります。他にもホルモン等の材料としても使われ、比較的早いサイクルで消費される最前線の消耗品であるともいえます。
最前線の消耗品は補給線を確保するのが戦略の常道。脂質こそ日々の食事で適切に摂取することが肝要なのです。
脂質が不足すれば頭痛や疲労感、体力低下、炎症が悪化しやすくなるなどの深刻な欠乏症が生じます。
にもかかわらず、超肥満大国アメリカを中心に長らく「肥満の主犯はアブラだ!」とされてきたこともあり、世の中には脂質に対するネガティブなイメージがすっかり定着した感があります。
かく言う自分も最近まで特に根拠なく「低脂肪」食品全般を奉じておりました。
本稿では「脂質は必要なものなんだ」というイメージを橋頭堡として確保したいと考えます。
脂質の中にも種類があり、分子構造から「オメガ6」「オメガ3」と呼ばれるグループは「必須脂肪酸」と呼称されております。
「必須〇〇」とは、「人体に必要不可欠だが体内で生成できないので外部から摂取する必要がある栄養素」のことです。
つまり、
「絶対に摂らなければならない脂が、そこにはある」
とも言えるかと思います。
必須脂肪酸のうちサラダ油などに多く含まれる「オメガ6」は油モノに偏った食生活では摂りすぎの場合があり、逆にサケ・サバ・マグロなどの魚に多く含まれる「オメガ3」は不足しがちだといわれております。
魚以外にもクルミや大豆、アマニ油等にも植物性のオメガ3脂肪酸が含まれるので、これらはダイエット中でも積極的に摂取するべきであります。
タンパク質の概要
タンパク質は筋肉を始めとする体組織の材料であります。同志諸賢がご存じのとおりです。
アミノ酸と呼ばれる分子単位が多数結合した巨大な総体がタンパク質であり、人体に吸収される段階ではアミノ酸もしくはアミノ酸が数個だけつながった「ペプチド」のサイズまで分解されます。
逆にいうとタンパク質のままでは分子がデカすぎて小腸から吸収できません。バスケットボールが台所のザルを通らないのと一緒です。
アミノ酸にも脂質と同じく「必須アミノ酸」が存在します。
トリプトファン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンの9種類ですが、お医者さんかクイズ王のような特殊な職業でない限り暗記する必要はないかと思います。
これらの必須アミノ酸は「1種類でも不足するとその不足した1種類にバランスを合わせて他のアミノ酸の吸収が阻害される」というめんどくさい性質があります。
食品にアミノ酸がバランスよく含まれているかどうかを判定した「アミノ酸スコア」と呼ばれる指標があります。
たいていの肉類が100点なので「いったいどの肉を食えばバランスを保てるのか・・」と気に病む必要はありません。
我われはタンパク質やアミノ酸を単体で食するわけではありません。「肉うめえ」と感じることはあっても「トリプトファンうめえ」とはならないのです。
肉類はまるごとタンパク質みたいなイメージがありますが、全重量に占めるタンパク質の割合は10~20%といったところです。意外に少ないと思われる方も多いのではないでしょうか。
残る80~90%に含まれるさまざまな栄養素との食べ合わせに大きな価値があります。「ダイエットにはタンパク質だ!」とばかり無暗にプロテインを飲むのは推奨できません。自分も少量飲んでいますが、プロテインはタンパク質含量70%というきわめて不自然な物質だということを承知しておく必要があります。
肉以外では大豆なども同様です。タンパク質系食材は動物性、植物性のものをまんべんなく摂るのが良いと言われております。
ダイエット中でも欠かすことのできない栄養素はたくさんあります。どれかを極端に増やしたり減らしたり、あるいはカタカナの成分が強調されたサプリメント類を多用するのではなく、さまざまな食材を普通に食べることが肝要であります。
- 「三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)」は人間のエネルギー源
- 糖質がもっとも体脂肪になりやすい
- 脂質は細胞膜などに必要な栄養素
- タンパク質は筋肉などの材料
- ダイエット中でもさまざまな食材をまんべんなく食べるべき