あらゆる作戦は事前にシミュレーションが行われます。
設定された戦略目標からブレイクダウンした具体的な戦術が想定・試行され、これに基づいて実際の作戦が遂行されるのです。シミュレーションがテキトーだったか、あるいはまったく行われなかったせいで失敗した作戦は枚挙にいとまがありません。
我われ中年男性のダイエット戦線においてもシミュレーションは有効であります。巨大肥満生物と化してしまった自身の身体をどうにかする作戦を事前にシミュレートするのです。
どこを目標に何をどのくらい行うのか、ダイエット目標のシミュレーションにはさまざまなアプローチがありますが、あんまりアレコレややこしくない方法が国から提示されていますのでやってみたいと思います。
本稿では「内臓脂肪減少シート」について考察いたします。
内臓脂肪減少シートとは
『内臓脂肪減少シート』は、厚生労働省による『健康づくりのための運動指針2006』の第2章・実践編の参考資料「内臓脂肪減少のための身体活動量の目標設定」に掲載されたワークショップ形式の資料です。
当時の最新科学を踏まえた専門的な知見に基づいて設計されているにもかかわらず、きわめて平易でわかりやすい表現でまとめられていて、中学生くらいでも実践可能なベーシカルツールになっています。
しかし『内臓脂肪減少シート』とは、お上の資料にしてはずいぶんとキャッチーなタイトルだなぁ・・と思っていたら、同指針の改定版『健康づくりのための身体活動基準2013』では内容をマイナーチェンジしたうえで『内臓脂肪減少のためのエネルギー調整シート ー身体活動と食事で、エネルギーの消費量と摂取量を調整ー』に変更されていました。
「・・長いですね」(長谷川博己)
「役所のすることですから」(國村隼)
「『お腹へこませ作戦』も子供っぽいですから、『ヤシオリ作戦』としましょう」
・・・ってわけにもいかないので、本稿ではタイトルはオリジナルの2006版『内臓脂肪減少シート』としつつ、内容は2013版を使わせていただきます。名前はついていることが大切ですから。
体重90kgでシミュレート開始!
ではやってみます。
内臓脂肪減少シート
ステップ1:今の私
身長〔175〕cm、腹囲(体重)〔90〕cm(kg)、BMI〔29.4〕kg/m2
腹囲(cm)と体重(kg)が同じ数字っていうあたり、かなり大胆にざっくりとしていて自分は好きです。
BMIがちょっと唐突に出てきた感じですが、体重÷身長÷身長で求められます。
体重90kgというのは、小官のダイエット開始当初の体重の近似値であります。BMIが29.4って男性の標準値18.5〜25に比べるとなかなかヤバいですね。
ただ、この後のシミュレート過程でBMIを使うところがないので、なんのためにここで算出するのかはわかりません。標準値と現状の差にビックリして焦りを増大する効果はあるかと思います。
ステップ2:私の目標
目標腹囲(体重) 70cm(kg) 差は〔a 20〕cm(kg)
達成時期の目安 → 〔b 12〕ヶ月後
目標は高めに70cm(kg)、達成時期は12ヶ月後としてみます。
がんばれば半年くらいでも不可能ではないと思いますが、けっこうな追い込みを要するペースになってしまうので1年としました。
2006版では「確実にじっくりコース(1cm/月)」と「急いでがんばるコース(2cm/月)」があらかじめ設定されていましたが、2013版ではなぜかオミットされています。わかりやすくてよかったんですが、裏で米国の圧力でもあったのでしょうか。
あるいは巨サイ対(巨大肥満生物特設サイズダウン対策本部)で「なんか押しつけがましいな」という意見が出たのかもしれませんね。人によって適切な減量ペースは大きく異なるので仕方ありません。
ステップ3:目標達成に必要なプラン
目標達成のために減らしたい、1日あたりのエネルギー量は
〔a 20〕cm(kg) × 7,000kcal ÷ 〔b 12〕ヶ月 ÷ 30日 ≒ 389 kcal/日
さらにこの1年間で体重が〔 5 〕kg増えたと想定して、その分を補正
〔 5 〕 × 7,000kcal ÷ 365日 ≒ 96 kcal/日
補正値を加えて
389 + 96 = 485 kcal/日
出ました!
小官が1年で90kg → 70kg (あるいは腹囲90cm → 70cm)にサイズダウンするには、1日あたりだいたい500kcalぶん「身体活動を増やす」と「食事量を減らす」を継続する必要がある、という指針が設定できました。
やっぱり長期戦ってことで
「身体活動と食事で1日500kcal」という指針が出たところで、実際に日々の対処をどうするかを想定します。
対処フローの選択肢はシンプルです。
静観、つまり野放し。もしくは捕獲か駆除か、それとも湾外に追い出すか、ですね。
・・いやいや野放しにしたらデブのままですし。
まずは『内臓脂肪減少シート』に掲載された「体重別エネルギー消費量」の表をもとに、どんな運動がいいか検討を・・・って、んんっ!? 体重「90kgの場合」がない!
デブが使うことを想定した資料なら、せめて100kgくらいまで記載してほしかったですが・・。
まあこのへんは、カロリーをからめた話っていう時点でどのみち概算値でしかないので、参考程度でよいかと思います。
現実問題として運動で数百kcalを消費するのはかなり難しいのと、水泳とかゴルフとかテニスとかも毎日ってわけにいかないので、仕事をしてる平日は「通勤中に階段を使う」とか「気持ち早歩きする」あたりでどうにかプラス100kcalくらいが関の山と思われます。
そうすると残り400kcalは食事を削ることになりますが、ただ闇雲にカロリーを減らそうとすると脂質やタンパク質までターゲットになってしまうので、「毎日食べ過ぎてる糖質系食品のカロリー」に絞って考えます。
自分の場合は・・・
- つい買い食いしちゃうアンパン ・・・ 220kcal
- ブラックだと苦いから甘い缶コーヒー ・・・ 80kcal
- 食後のもう一品でプリン ・・・ 110kcal
- 毎日1本飲まないとスッキリしないコーラ ・・・ 230kcal
- 仕事で頭つかうからドーナツ ・・・ 220kcal
なんか簡単に400kcalを超えてしまいました。
これなら白米などの主食を極端に削る必要もなさそうです。というより、どんだけデブまっしぐらの食生活してるんだ、と。
もし貴官が小官のようにわかりやすい糖質まみれの食生活でない場合は、もう少し食事内容を細分化して「朝食のパンの枚数」とか「ご飯の盛り量」、「ラーメンを食べる頻度」など、ふだん食事で摂りすぎている糖質を削っていく作業が必要になります。
しかしここまできてアレですが、カロリーの計算ってそんな精密なもんじゃないので、想定通りにいかないことが多々あります。そのせいでダイエットそのものがイヤになってしまったら本末転倒であります。
当スリム教導隊でももはやカロリーをそこまで重要視しておりません。ただざっくりとした長期戦の指針にはまだ有効ですので、自分なりの「1日〇〇kcal」の数値を設定できれば十分であります。
運動も糖質系食品も、調整可能な内容は人によって異なりますので、貴官の生活スタイルに合わせてシミュレートしてみてください。
あとは自分に最適化したシミュレーション結果に沿った生活を送り、巨大肥満生物である第四形態から普通サイズの人型である第五形態へと進化を遂げましょう。
- ダイエットにはシミュレーションが有効
- 『内臓脂肪減少シート』で簡単に設定できる
- 自分オリジナルの作戦でダイエットに臨む