我われニッポンの中年男性がダイエットに取り組むにあたって、必ず一度は直面するテーマが存在します。日常生活の中に遺伝子レベルまで刷り込まれた、変えたくともなかなか変えられない食習慣。
すなわち「けっきょくコメは食っていいのか悪いのか」という難題であります。
本稿ではダイエットの成否を大きく分ける「コメ」について考察いたします。
とはいえ、世間様でもこれといった決着を見ていないテーマに対して、自分のような兵卒が一石を投じてやろうなどと大それたことは考えておりません。
あくまで自分個人が一年戦争においてコメとどのように付き合っているかをお伝えしたいと思います。
デブ期のコメの量はすごかった
隠し立てするような話ではないので率直に申し上げますが、モビルアーマー体型だった頃の自分のコメの量はそれはスゴイものでした。
特に仕事終わりの深夜に食べていた量はすさまじく、丼に近い大ぶりの茶碗に2~3杯は当然のようにかきこんでおりました。おかずも決して少なくなかったにもかかわらず、「おかず:コメ=1:5」くらいの割合でむさぼり食っていたものであります。
職場の女子が「わたし糖質制限ダイエットで痩せたんだ~」などとヌカそうものなら、「米食を否定するとはヒコク〇ンめ」くらいに思っておりました。もちろんコメを食べないというだけでその人をヒコ〇ミン呼ばわりする自分の方がどうかしていたわけですが、当時の自分はかなり本気でダイエット成功者たる女子社員をヒ〇クミンだと断じる危険思考に凝り固まっておりました。
当時の自分のコメに対する思いや習慣を歌にするなら、こんな感じです。
大ライス幻想
抱きしめた 象印の釜
熱く燃やせ 炊けたら蒸らせ
腹ペコの ままじゃツラいと
コメを食った 平日の深夜
大ライス幻想
そうさコメだけは
誰も奪えない心の主食だから
(炊飯せいや!)
中年はみんな
(炊飯せいや!)
明日も出社 Oh yeah
(炊飯せいや!)
魔が差すがままに
(炊飯せいや!)
今こそかきこめ
もう、なんと言いますか・・・そりゃ太っていたのも当然なのであります。
コメを大量に食らうことは翌日の活力源だと信じて疑わず、自分の中では「正義」と同義になっておりました。
なんなら「俺は地上の愛と正義のためにこのコメを食っているのだ」とばかりに、強烈な使命感につき動かされていたような気がします。
こんな状態から脱して一年戦争で勝利を収めるには、それなりに思考定義をシフトする必要があったのは言うまでもありません。
「コメはダメだ」論
ダイエットにおける「コメはダメだ」論の主眼は、その糖質量と血糖値上昇度にあります。
一般的に炊飯器で炊いた白飯=コメの成分のうち、だいたい25~40%を糖質が占めております。また、食後血糖値の上昇度を示すGI値も「84」と、玄米の「56」と比べてもかなり高い水準にあります。
コメはまぎれもなく糖質が多く血糖値も上昇しやすい「糖質系食材」に分類され、肥満に直結する危険性をはらんでいるのであります。
また、江戸時代に庶民に広まった白米食はビタミンB不足を招き、脚気が深刻な社会病になっていたそうです。
1972年に医学博士・近藤正二によって全国的な調査に基づいて著された『日本の長寿村短命村』によれば、コメをたくさん食べている地域はそうでない地域に比べて比較的短命であったとされております。
「人間の食生活は狩猟採集こそが正しい」とする原始人食論者の中には、「農耕は人類最悪の産物だ」とまで言う人もいます。
といっても、むろん彼らとて「全人類はただちに農耕を捨てて狩猟採集に戻れ」などと暴論を展開したいわけではありません(たぶん)。それではアクシズを落として性急に全人類のニュータイプ化を推し進めようとしたシャア大佐と同じです。要は穀類、ひいては糖質の食べ過ぎに対してわかりやすく警告を発しているのであります。少なくとも自分はそう解釈しております。
では、「コメはやっぱり悪だ」と断じていっさいのコメを断つべきかと問われると、それはそれで「そんな極端に走るのはかえってNG」なのであります。
「コメはいいものだ」論
糖質制限ダイエットの世界的な流行に対する反動か、「極端な糖質制限は危険」と警鐘を鳴らす研究が数多くあります。
1年以上の長期間にわたって極端に糖質を減らした食生活では「心臓病のリスクが1.5倍に増加した」「脳梗塞のリスクが増大した」「トータルの死亡率が1.3倍に増加した」などなど、さまざまな「アンチ糖質制限」の報告があるのです。
ことコメに関して言えば、玄米からの精米過程で多くの栄養成分が失われてしまうものの、白米の状態でもビタミン・ミネラル・タンパク質を豊富に含んでおります。当然ながら食物繊維も含まれており、腸への影響も良好であります。ビタミンA・C・D、それに脂質を含まない点は要注意ですが、そのへんは野菜や肉・魚などのおかずで摂取が可能なので大丈夫であります。
筋肉を形成する際も、単にタンパク質ばっかり大量に摂取すればいいというものではありません。適切な量の糖質をいっしょに摂った方がより効果的に筋肉がつくといわれます。コメはむしろ筋トレの友と呼んでも差し支えない食材なのです。
およそ3000年前から根付いてきた稲作とともに、我われ日本人の体質や腸内細菌の構成もコメに適したものに進化しているといわれます。「穀類はダメ」とする報告の多くが、米食を前提としていない欧米の研究だというのも注目するべきポイントです。
総じて、コメは日本人にとって非常に優秀な主食なのであります。
適正量は守らないと
「そうらやっぱり、日本人はコメを食っていいんだ」と安心した自分ですが、いっかな肥満を脱する気配がありませんでした。
それもそのはず、「コメはいいものだ」論に留飲を下げるあまり、その末尾に記された「適正量」に関しては完全にスルーしていたのであります。
さまざまな「コメはいいものだ」論の末尾にオマケのように添付された「適正量」は、おおむね「1食当たり茶碗に軽く1杯」というものでありました。えーっ! 「コメはいいものだ」って言いながら、適正量はそんなもん!? いいものなら無限に食っていいんじゃないの?
「コメはダメだ」論も「コメはいいものだ」論も、どちらもけっきょくは「食べ過ぎはイカン」と語っていたのであります。考えてみれば当たり前の話ではあるのですが、ここが自分にとって大きく考え方を変えないといけない点でありました。
同じ量のコメを同じ条件のもとで食べたとしても、どのくらい太りやすいかは人によって大きく違うとされております。「自分にとってのコメの適正量はどの程度か」、「肉や野菜をコメより先に食べるようにしたらどうか」、「夜にコメを食べないようにしたらどうか」・・・など、自分に適した新しいコメの習慣を探り続けました。いわばコメのPDCAであります。
最終的に「朝と昼は特に制限を設けず、夜のコメは週1~2回までにする」というのが自分にとって適正かつ持続可能な習慣であるとの結論に達し、それを継続いたしました。結果、半年で約20kgの減量につながったのであります。
コメに限った話ではありませんが、「完全に善」「完全に悪」という極論で語れる食材はありません。ダイエットにおけるインパクトの大きい主食であるコメは特に、「自分にとっての適切な付き合い方」を探るのが肝要であると考える次第であります。
ちなみに、自分が愛用している炊飯器はアイリスオーヤマの圧力IHです。大手メーカーさんの高級機には一歩譲るかもしれませんが、それまで使っていたIH炊飯器と比べるとコメの炊きあがりがまったくちがい、非常にコスパのいい炊飯器だと感じております。
どうせ食べるならおいしく炊けるマシンで、粒が立っているコメを味わいたいものでありますね。ついつい食べ過ぎないように注意が必要ではありますが。
- コメはさまざまなメリットを持つ主食
- 同時に肥満リスクの高い糖質系食材でもある
- 「夜に食べない」など、自分にとって適正なコメとの付き合い方を探るべき