湘北高校っぽいタイトルでお送りしております。
昨今のブームを受けて世の中にはダイエット関連の情報や商品が溢れ返っております。右を見れば糖質制限、左を見ればトクホに乳酸菌に各種サプリメント、前にも後ろにもヨガにストレッチに〇〇トレ。
どれも科学的なエビデンスや肩書き・実績・お客様の声を背景に「正しさ」や「権威づけ」に余念がなく、お金を払ってでも入手した方がよさそうなものばかりであります。
しかしここまで来るとサスガにもう食傷の極みと言いますか、我がスリム教導隊の同志には大半が「余計なお世話だ!」と一蹴したくなるモノばかりではないでしょうか。
ここはちょっと冷静に、あるツールを使って世の中にあふれるダイエット関連の情報や商品にどう接したらいいかを整理してみたいと思います。
用いるツールは高校数学の「命題と条件」、それに「必要条件・十分条件」です。
湘北高校の桜木君は数学が苦手でしたし、同志諸賢の多くも高校卒業と同時にお忘れかと思いますが、どうかご安心を。
自分も数学はそんなトクイな方ではありませんでしたので、可能な限り平易な表現でまとめてまいりたいと思います。
命題と条件とは
まずは言葉の意味から見ていきましょう。
- 「条件」:なんらかの事象( p や q で表す)
- 「命題」:2つの条件とその関係性によって真偽が明確にできる事柄
これだけではワケがわかりませんので、ここでは条件pとqをザクの装備で考えてみます。
条件p:ザクマシンガンを装備している
条件q:ザクバズーカを装備している
・・・とします。
するとザクの母集団に対してpとqの条件を満たすザクの関係は下図のようになります。
マシンガンとバズーカの両方を装備している機体は「pかつq」、少なくともどちらか一方を装備している機体は「pまたはq」と表現できます。
どちらも装備していない機体は「pでもqでもない」となります。おそらくヒートホークやクラッカー、シュツルムファウスト、もしくは岩で武装した機体でしょう。
ザクは両手が使えるので、この例の条件pとqは互いに独立しています。
これだと「pならばqである」という命題が成立しませんので、次に「必要条件・十分条件」の例を見ていきます。
必要条件・十分条件とは
命題「pならばqである」が成り立つとき、qはpの必要条件、pはqの十分条件であります。
これが数学で教わる必要条件・十分条件ですが、やはりわかりにくいのでザクで考えてみます。
今度の条件p・qはこんな感じです。
条件p:ザクである
条件q:ジオン公国のモビルスーツである
ザクであれば間違いなくジオン公国のモビルスーツですので、命題「pならばqである」は真であると言えます。
先ほどと違って今度はpの円がqの円の中に入っています。
言葉で表現するとこんな感じです。
「q:ジオン公国のモビルスーツであること」は「 p:ザクであること」にとって必要である。
→『qはpの必要条件』
「p:ザク」であれば、十分「 q:ジオン公国のモビルスーツである」と言える。
→『pはqの十分条件』
この命題の逆、すなわち「qならばpである」は真ではないという反例を示すのはカンタンです。
「 p:ザクであること」は「q:ジオン公国のモビルスーツであること」にとって必ずしも必要ではありません。グフだってドムだってゲルググだってジオン公国のモビルスーツですし。あ、もちろんギャンも。
話がややこしくなるので連邦軍に鹵獲あるいは戦後接収された機体についてはこの際、考えないこととします。ゲイリー少尉でなくてもそんな姿は忍びないものです。
pとqの条件が完全にイコールの状態を「必要十分条件」と言います。pもqもお互いに必要であり十分である状態なので、その場合は図の円の位置も大きさもまったく同じになります。
条件p:ザクⅡである
条件q:MS-06である
このようなケースではお互いに必要十分条件であると言えるかと思います。
ダイエット情報は必要条件か
「命題と条件」「必要条件・十分条件」についておさらいしたところで、いよいよ本題です。
あるダイエット情報をどのように評価するかについて考えてみます。条件p・qは以下の通りです。
条件p:あるダイエット情報
条件q:スリムな健康体でいるための習慣
多くの場合、ダイエット情報・商品に触れたときの思考は上図のようになります。
なんとも極端な円ですね。言わずもがなですがこれは錯覚です。
冒頭でお話した通り、ダイエット情報や商品が紹介される際は効果についてのエビデンスや紹介者の肩書き、実績、それにお客様の声、カタカナの物質名などで補強されている場合がほとんどで、いかにも「これが正解だ!」と思い込んでしまいがちなのであります。
人はえてして権威者(っぽい人)が語るシンプルな正解を求めるものです。これはギレン閣下やシャア総帥、フロンタル大佐に煽動された人の多さを考えれば決してバカにできない傾向です。
上図の場合はpとqの円がほとんど同じ大きさで、もはやスリムな健康体にとっての必要十分条件であるかのような感覚にまで陥っています。
するとどうなるか。
テレビで「〇〇はダイエットにいいものだ」と紹介された翌日にスーパーの棚からサバ缶を駆逐したり、バナナやトマトを殲滅したりといった軽挙妄動に走ることになります。
あるいはうっかり高額なサプリメントを購入してしまったりするわけであります。
もちろんエビデンスに基づいた情報提供やバナナがことさら悪いわけではありませんが、実際にはあるひとつの食品やサプリメントを摂取しただけで急にスリムな健康体を得ることなどできません。
近所のスーパーに一時的な混乱をもたらすのが関の山で、想像した結果を得ることなく終わるケースが大半です。
実際の「条件p:ダイエット情報」の多くは以下のいずれかです。
- pは「条件q:スリムな健康体」の十分条件ではあるが思ったほど大きなインパクトはない
- p’は「条件q:スリムな健康体」に資することもあるがそうでないこともある
- p”は「条件q:スリムな健康体」とは関係ない、あるいはむしろ害がある
①の場合、インパクトは小さいですがスリムな健康体にとっての十分条件なのでまだ良い方です。
②や③だとスリムな健康体の十分条件ではなく、ヘタをすると健康を害しかねません。
ところが我々は①ならまだしも、②や③をあたかも必要十分条件であるかのように錯覚してしまう場合があります。
また、同じ情報であっても受け取る人によって①~③のいずれに作用するかもまちまちです。
「バナナはダイエットに良い」という情報があったとして、「1日1本バナナを食べる」なら①、「1食抜いて代わりにバナナを食べる」だと②、「3食すべてバナナに置き換える」だと③、といった具合です。
そして、最初に錯覚した必要十分条件であるかのようなインパクトと、本当はそこまでモノスゴクない現実とのギャップに直面すると「あんなものは役に立たん」「嘘っぱちだ」「余計なお世話だ」と思ってしまいます。
冷静に見極める
誤解のないようにお願いしたいのは、ダイエット情報や商品のすべてが「たいして役に立たないものを高額で売りつけようという悪意の産物」ではないということです。自分なんかよりずっとマトモな情報を、一人でも多くの方に届けようと地道に発信している同志も数多くおられます。
同じダイエット情報に接した際に、インパクトを過大に錯覚してしまうか、あるいは上手に自らのスリム習慣の一部に取り入れて成果を手に入れられるかは受け取る側のリテラシー次第です。
そして、そのリテラシーのベースとなりうるツールが「命題と条件」「必要条件・十分条件」だというのが自分の考えであります。
自分なりの条件設定がちゃんとできていれば、多くのダイエット情報に触れてもいちいち錯覚したり混乱したり余計なお金や時間を使ったりすることもなくなります。
下図は本稿の主旨である「命題と条件」を応用したダイエット情報との理想的な接し方のイメージです。
一つひとつのダイエット情報は、科学的に正しかったとしてもそこまで大きなインパクトはありません。
そこを承知した上で、自分に合ったものだけをいくつか選んで習慣に取り入れるようにしたいものであります。
それにしても数学の考え方ってこんなところで使えるものなんですね。もっと早く気づいてちゃんと勉強してたら、ダイエット商品であんなに散財することもなかったかな・・・。
最後に、工業コロニー・インダストリアル7のビスト邸で収録されたと思われる会話記録をご覧いただきながらお別れしたいと思います。
ビスト邸にて
スリムな方「常に結果だけを求める大衆は、明確な定義を持たず、可能性しか示さないダイエットに飽きた。その呼び名はいつしか『詐欺まがいの商法』と同義になって『健康的な食事』という本来の概念から最も遠い存在とされてしまった」
(中略)
スリムな方「ダイエットには未来を変える力がある。いや、本来あるべきだった未来を取り戻す力というべきか。ただし誰でも成功できるというわけではない。あれは解釈を誤れば健康を害してしまうものだ」
スリムでない方「だからまずヒントを与えて試そうと?」
スリムな方「もしも、あなた方がひとつ事にこだわるだけの狭隘な主義者なら、スリムな健康体を得ることはないだろう」
スリムでない方「ひとつ事とは?」
スリムな方「バナナダイエット」
- 必要条件は「別のある条件の前提となる条件」
- 十分条件は「別のある条件でありえる条件」
- ダイエット情報は良くても十分条件
- 氾濫する情報に振り回されないマインドを持つ