ダイエットにおいて「食後血糖値」について把握することは非常に有益であります。
食後血糖値の急上昇と急降下、体脂肪として蓄えられるメカニズムを整理することで食生活改善のヒントが得られます。
本稿では「食後血糖値の急増減(血糖値スパイク)」と「血糖値スパイクへの対抗戦術」について考察いたします。
血糖値とは
血糖値とはその名のとおり血液中の糖の量を表す数値です。
糖は脳を始めとする全身のエネルギーであり、身体が健常であれば血糖値は常に一定のレベルに保たれるようになっています。
血糖値を上げる要素はいくつかありますが、血糖値を下げるホルモンは膵臓から分泌されるインスリンしかありません。
正常時はこの「上げる要素」と「下げる要素」が拮抗してバランスが保たれております。
体組織が消費するエネルギーなら際限なく上げてもよさそうなものですが、多すぎる糖には血管を傷つけるなどリスクの側面があります。
ゆえに血糖値が急上昇するとそれが脳に伝わり、脳から膵臓に指令が発せられてインスリンが分泌され、上がりすぎた血糖値は下げられます。
このとき「血糖値を下げる」とは血中の糖を分解したり燃焼したりではなく、形を変えて筋肉・肝臓・脂肪細胞に貯め込まれることを意味します。
明らかに過剰な分は貯め込んだりしないで、小宇宙みたいに気合いで燃えてくれるといいんですけどねえ・・・。
食後血糖値の急増減(血糖値スパイク)
食事に含まれる糖質の比率が高いほど食後の時間帯に血糖値は上昇しやすくなる傾向にあります。
糖質系食材の量・比率・食べ合わせなどによってさまざまですが、糖質系飲料(甘い缶コーヒー・清涼飲料水など)を飲めば早ければ30分で血糖値が急上昇します。
そして急上昇した血糖値は膵臓から放たれるインスリンによって急降下します。この極端なアップダウンを「血糖値スパイク」と呼称します。
ことダイエットに関しては、一連のアップダウンの「ダウン」の部分で余剰分の糖が中性脂肪に変じて脂肪細胞に蓄えられてしまうのが大問題なのであります。
ここにさらに「糖質中毒」のサイクルが追い打ちをかけます。
血糖値が上がると脳は「おお、貴重な糖分を獲得できたな。よしよし」とばかりにドーパミンなどの快楽物質を出して気分を上げてくれます。
一方で過剰な血糖は危険なのでインスリンが分泌されて上がった血糖値は急降下します。
インスリンによって血糖値が正常範囲を下回ると、今度は血糖が足りないのですさまじい睡魔やだるさに襲われてしまいます。
昼食後の会議でモーレツに眠くなるのはアノ人の話が特別ツマラナイからではなく、コレが主因であります。
眠い、だるい、この不快感をなんとかしたい。するとどうなるか。
また糖質系食材が欲しくなってしまいます。
そして再び甘い缶コーヒーやジュースを飲んでドーナツを食し、一瞬のハイテンションと引き換えにさらなる眠気とだるさと体脂肪を得てしまうのです。
この悪循環こそが麻薬中毒とソックリな構図の「糖質中毒」であります。これを乗り越えるには相応の知恵を働かせるしかありません。
「人間の知恵はそんなもんだって乗り越えられる!」
MIA認定される前にアムロ・レイ大尉が残された言葉です。大尉が肥満に悩まされていたという事実はありませんが、人類普遍のメッセージとしてありがたく拝借いたします。
知恵を結集して血糖値スパイクを乗り越える作戦を立案しましょう。
血糖値スパイクへの対抗戦術
ある1回の食事を例にとって血糖値スパイクへの対抗戦術を考えたいと思います。
「食事を抜くのはNG」という戦略要件は守りつつ、実践可能性を考慮しつつ作戦立案します。
作戦は大きく3段階です。
対抗戦術①
食材・メニューを選ぶ
- 甘い飲みものは飲まない
- 主食を今までの半分くらいにする
- 主菜(タンパク質系)・副菜(野菜系)を増やす
- デザートは控える
まずは糖質系食材の絶対量を減らすことを考えます。いわゆる「糖質制限」「糖質オフ」と呼ばれる戦術に近いものであります。
食事のトータル中に糖質系食材が占める比率を下げることで血糖値スパイクの度合いを低減する効果が期待できます。
「糖質制限」など言葉の持つイメージの問題が大きいのですが、口に入る糖質を完全にゼロにすることは不可能だしそこを目指すべきではありません。
1年以上、極端な低糖質状態に置かれると死亡率が1.3~1.5倍になるという報告もあります。
糖質制限を推す専門家の方でも「完全カット」を主張されているのは聞いたことがありません。なにごとも極端は禁物です。
あくまで現状で体のキャパを超えて過剰摂取している分を調整して、
自分にとっての最適量を見出すプロセス
と考えます。
最も危険度の高い糖質系飲料はひとまずカットします。潔く「甘いものは飲まない」「代わりに水かお茶を飲む」でいきたいと思います。ここはちょっと妥協なく一歩目を踏み出したいと考えます。
次いで主要な糖質系食材である主食(ご飯・パン・麺類)を現状の半分くらいに減らします。
一度の食事で半分に減らすのは難しいケースがありますので、その場合は朝昼晩のいずれか1回もしくは2回、主食を食べないなど工夫しつつ、そのぶん主菜(タンパク質系)・副菜(野菜系)を多めに食べるようにします。
「昼は毎日ソバ屋かラーメン屋」であれば、頻度を半分くらいに減らします。代わりに主菜・副菜を多く食べられる定食屋さんや飲み屋さんの昼間営業、コンビニ食などで調整が可能です。
「ご飯おかわり自由」の誘惑にはアムロ大尉の言葉を思い出して理性で打ち克ちましょう。
最後に食後のデザートも控えます。
せっかく主食を調整しているのに主食よりも血糖値スパイク危険度の高い甘味のリミッターが解除されたままではよろしくありません。
白米を控えてデザートを食べるよりはデザートをやめて3食で白米を茶碗1杯ずつ食べた方がよいと思われますが、このあたりは理性で量をコントロールしたいところです。
甘味の量・頻度は現状の半分以下、可能であれば週イチ以下の特別なシーンに限定するのが望ましいです。
「果物なら自然のものだし血糖値が上がりにくいから大丈夫」と思いがちですが、果物に含まれる果糖は血糖値をあまり上げずに脂肪細胞にほぼ直行する性質があるとされるので、やはり大量摂取は控えるべきと考えます。
いずれも「〇〇なら大丈夫」「少しだけマシ」という代替食品があったりしますが、まずは上記を基本戦術に設定いたします。
対抗戦術②
食べ方を工夫する
- 一度に量を食べすぎない
- 食べる順番を守る(ベジファースト)
- 噛む回数を増やして時間をかけて食べる
一度の食事では「腹八分目」が基本であります。お腹ポンポンになってすぐに全力で戦うことができるのはサイヤ人くらいのものです。
次に「糖質系食材より先に野菜を食べると血糖値スパイクを抑える効果がある」という事象が広く知られておりますので採用します。
いわゆる「ベジファースト」戦術であります。
「宇宙一健康」と言っても過言ではないサイヤ人たちの本名が野菜に由来しているのは、もしかしたら鳥山先生からのメッセージ・・というのは考えすぎでしょうか。
「食事始め!」の号令とともにいきなりライスを頬張ったりしないように注意します。まずは野菜類を5分くらいかけてゆっくり食べると効果が高いとされております。
とはいえ、コース料理でもない限り サラダ → メイン → 主食 と最初から最後までお皿の順番を厳守するのもアレなので、自分は最初に野菜類を2口3口食べたらあとはわりとテキトーに食しております。
順番の完成度を気にしすぎて食事を楽しめないのもちょっとイヤですし。
「噛む回数を増やす」ことと「時間をかけて食べる」ことも、いずれも血糖値スパイクを抑える効果が報告されている戦術です。
1口につき20~30回くらいを目安に咀嚼し、一度の食事には20~30分くらいの時間をかけたいと考えます。
対抗戦術③
食後に軽く運動する
食事終了後、血糖値スパイクが起こる前に軽く身体を動かすことで自律神経系を「吸収モード」から「活動モード」に強制転換する効果が期待できます。
どの程度の運動でどの程度の効果が期待できるかは各種条件によりますが、おおむね10~20分程度の散歩で十分かと思われます。
小宇宙を燃やすほどの高負荷運動や筋トレまでおこなう必要性は認められません。
スリム教導隊では「ハイポート」を取り入れております。
ハイポートとは小銃を胸の前に抱えた「控え銃(ひかえつつ)」の姿勢のことで、自衛隊においてはこの姿勢で駆け足をおこなう教練のことを指します。
2~4列縦隊の分隊もしくは小隊でおこなうのが一般的ですが、分隊に所属していなければ一人でおこなってもかまいません。
ただし街中でやると間違いなくアブナイ人だと思われるので実施場所は十分に考慮します。
小銃ナシ、ランニング抜きでその場で足踏みする「エアハイポート」を食後に軽くおこないます。
かけ声は気分が上がればなんでもよいのですが、自分も属する40代男性層であれば「ファミコンウォーズ」のCMソング?がよろしいかと。
※リンク先は音が出ます。オフィス等でご覧の際はご注意ください。
♪「ファミコンウォーズが出るぞ」「ファミコンウォーズが出るぞ」
「コイツはどエラいシミュレーション」「コイツはどエラいシミュレーション」・・・
- 血糖は体のエネルギー。高すぎも低すぎもNG
- 糖質系食材の比率が高いと「血糖値スパイク」が起こりやすい
- 対抗戦術1:食材・メニューを選ぶ
- 対抗戦術2:食べ方を工夫する
- 対抗戦術3:食後に軽く運動する