「なんだ、またマメかよ」
ミリタリー作品でたまに見られる戦場の食事の貧しさを表す描写です。
たしかに前線の糧食として供される煮豆の類は特別マズいわけではないものの、同じメニューを毎日食えるかと言われるとビミョーであります。
しかしながら、ダイエット戦線において「豆」は決して軽視できない存在なのです。
本稿では「豆」について考察いたします。
ジーン伍長の命令違反の原因は・・・豆?
これは自分の推測ですが、MS-06F ザクⅡのパイロットとして有名なジーン伍長が上官であるデニム曹長の命令を無視した原因は、もしかしたら「豆」にあるかもしれません。
ジーン伍長とデニム曹長といえば、サイド7の威力偵察中にたまたま給弾が完了していた連邦軍の試作モビルスーツ・RX-78との遭遇戦で、たまたま居合わせた民間人の少年にたまたま撃墜されてしまい、「ザク=ザコ」のイメージをいきなり決定づけてしまった不幸な二人ですが、ジーン伍長がデニム曹長の命令を聞いて即座に退却していればそんなことにはならなかった可能性があります。
ジーン伍長はいったいなぜ、功を焦ってデニム曹長の命令に背いてしまったのでしょうか?
ジーン伍長(また今日もマメか。モビルスーツにかける金があるならもう少し人間にも回してくれっての。・・・まあ、パンとスープがあるだけ整備の連中よりマシか)
デニム曹長「おいジーン」
ジーン「は、なんでしょうか。デニム曹長」
デニム「お前たしかマメが好きだったよな」
ジーン「・・・はぁ?」
デニム「このまえ着任のあいさつで言ってたろう。『ルウムの英雄と名高いシャア少佐殿の部隊で戦えるとあらば、たとえ毎日毎食マメでも粉骨砕身、任務に邁進する所存です。いやむしろマメは大好物であります』とかなんとか」
ジーン(い、いやそりゃたしかに言ったけど・・・。んなもん新人のウケ狙いに決まってんじゃん。わかるだろフツー!)
デニム「そんなお前に俺からのプレゼントだ」
ジーン「え、これは曹長殿の、マメ・・」
デニム「どうだ、うれしいか? うれしいだろう。遠慮はいらん。腹いっぱい食べていいぞ」
ジーン「ど、どうも・・・」
デニム「そのかわりお前のパンとスープは俺がもらってやろう」
ジーン「え・・・」
デニム「どうした、なにか不服か?」
ジーン「い、いえ、なんでもありません! ありがとうございます・・・」
デニム「もうすぐサイド7宙域に進入する。帰ってきてまたマメが出たらお前に譲ってやるからな」
ジーン「・・・・・・」
デニム「いいか、念のため言っておくが今回はあくまでも偵察が任務だ。忘れるなよ」
ジーン(く、くそーっ! ぜっったいに出世して、士官食堂でパンとスープと、それから・・・えーと・・・そうだ、ビフテキを食ってやる! そして今度は俺がデニム曹長に食わせてやるんだ! マメを!!)
(数時間後)
デニム「手柄のないのを焦ることはない・・・あ、ジーン! なにをする!」
ジーン「シャア少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだ!」
デニム「おいジーン、貴様! 命令違反を犯すのか! やめろジーン!」
ジーン「フン、手柄を立てちまえばこっちのもんよ!」
(中略)
シャア少佐「デニムに新兵が抑えられんとはな」
(中略)
ジーン「う、うわーっ!」
デニム「よくもジーンを!」
先任のデニム曹長の名誉のために申し上げますが、上記はあくまで自分の想像であります。ジーン伍長が撃墜されたことに激高した点を見てもデニム曹長の部下思いの一面が垣間見えます。
しかし、比較的スリムなジーン伍長と少し太めのデニム曹長、二人の体型を見るにあながち的外れではないかもしれません。
ともあれこの場面、もう少しジーン伍長が冷静でいられたら、士官学校主席クラスで尉官スタートのシャア少佐と、一般入隊の兵卒である自身との埋めがたいキャリアの差を一緒くたにする愚を犯すことはなかったはずです。
デニム曹長も杓子定規に「偵察が任務だ」などと言い放つより前に、豆を食べることのメリットをジーン伍長に語って聞かせるべきでした。
さまざまな食用の豆
豆類は穀類とともに人類の農耕の初期から栽培されていたと考えられております。煮たり焼いたり乾燥させたり、あるいは食べやすい形に加工したりと、およそ糧食として万能に近い態様を見せるのが豆類であります。
農水省によればマメ科の植物はおよそ650属18000種、そのうち人間が食用としているのは約70種類。日本で食されている主な豆の仲間だけでもインゲン属、エンドウ属、ササゲ属、ソラマメ属、ダイズ属、ヒヨコマメ属、ヒラマメ属、ラッカセイ属と、非常に多岐にわたります。
ジーン伍長が食べ飽きてしまったと思われるチリビーンズによく使われるのは金時豆(赤いんげん)と呼ばれるインゲンの仲間です。美味しいんですけどね。サスガに過酷な戦闘艦勤務で毎日同じメニューはちょっと・・。
いずれの豆にも共通する特長が、タンパク質を豊富に含んでいるという点であります。
また、抗酸化作用のあるポリフェノールやビタミンE、身体代謝にとって重要なビタミンB群、カルシウムやカリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラル、さらには食物繊維も豊富に含まれております。
単に空腹を満たすだけにとどまらず、体調維持効果の高い栄養成分をバランス良く含むのが「豆」という食材なのであります。
それはもう、宇宙世紀においても必須の食材にカウントされていることは間違いありません。
『機動戦士ガンダム』シリーズの作中では、小規模な農業プラント以外にあまり見当たらないのが残念ですが、おそらく居住コロニーや工業コロニー、観光コロニー等と並んで農業コロニーが存在するはずです。
でなければ100億ともいわれるスペースノイド人口の食糧をまかなえるはずもなく、エギーユ・デラーズ中将が地球の主要な穀倉地帯である北米を狙ったコロニー落とし作戦を決行するとも思えません。
穀類や野菜類だけでなく、豆類を専門に栽培する農業コロニーが存在しても不思議ではないのです。
ジーン伍長たちが乗艦していた特務艦・ファルメルにも、そうした背景から大量の豆が糧食として積み込まれていたことでしょう。
大豆製品の恩恵を
豆類の中でも特に大豆とその派生食品には多くのメリットが報告されております。
スリム教導隊において着目したいのは大豆製品のダイエット効果であります。国内外の研究で、豆腐などの大豆製品をよく食べる人により高い減量傾向が見られるとの報告があります。
豆腐、納豆、枝豆、きなこ、素煎り大豆、それに味噌、醤油と、日本食における大豆製品のバリエーションは世界屈指のものであります。海外で「日本食はヘルシーだ」とひとくくりに評価される向きがありますが、自分はこれら大豆製品による部分が大きいと考えております。
さまざまな大豆製品を当たり前に食べられる幸運を活かさない手はありません。
毎日の食事における豆腐や納豆の頻度を高め、豆乳を飲み、夏は枝豆を食し、間食のラインナップには素煎り大豆を加えたいところです。
ドズル閣下はファルメルの乗員を「粒よりを集めた」と評しておられましたが、おなじ「粒」なら料理長あるいは烹炊員長のポジションにはもっと豆料理に明るい人物をあてがった方がよかったと言わざるをえません。SCV-70 ホワイトベースのタムラ料理長のような日系人なら、あるいは飽きのこない豊富な豆メニューを提供できたのではないでしょうか。
ビーン・・・もとい、ジーン伍長の悲劇をくり返さないためにも、我々は豆を食べることのメリットを承知しておくべきと考えます。
- 豆はタンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含む優秀食材
- 豆腐などの大豆製品にはダイエット効果があるといわれる
- 日本食には多様な大豆製品がある
- 食事や間食の大豆製品を増やす