我々を苦しめる体脂肪とはなんでしょうか。
デッドウエイト? それとも装甲、あるいは増槽?
我々40代男性がダイエットにおいて戦うべき主敵であり、自分の体の一部でもある体脂肪の概要をおさえておくことは、まさしく「敵を知り己を知る」ことに他なりません。
本稿では「体脂肪」について整理いたします。
体脂肪は自分の身体の一部だが
かつて銀河超特急999号が訪れた「なまけものの鏡」という名の惑星がありました。
なにもかもが自動化されたその星では人間はなにもせずともよく、太りに太って最終的には肥満体が小山のごときサイズになって内側から住宅を圧壊してしまうのです。
肥満と無縁だった幼少期にこの話に触れた自分ですが、よもやその後30年の間に自分自身が何度も肥満と戦うことになろうとは夢にも思っていなかったのであります。
自分の身体の一部であるはずの体脂肪に牙をむかれる無情。いつからか自虐を込めて自分の体脂肪を「75式低機動兵装」と呼ぶようになっておりました。
そして40代で迎えた最後の一年戦争の過程で体脂肪の正体に近づくことで、ようやく「75式改」と呼称しても差し支えない高機動型へのモデルチェンジに成功しました。
それにしても75式とは・・・。自衛隊の戦車だったらもう何世代も前ですね。懐かしい『999』の話といい、年月の重みを感じます。
体脂肪の概要
標準的なヒトの全身にはおよそ600億個の脂肪細胞があるといわれております。
1個の脂肪細胞につき1マイクログラムの脂肪が格納可能です。つまり、すべての脂肪細胞が満タンになると約60kg分の脂肪エネルギーが蓄えらえる計算です。600億個の「セル」に少しずつエネルギーが格納された集合体が体脂肪なのです。
それも「1gあたり4kcal」の糖質に対して「1gあたり9kcal」の脂肪という高効率貯蔵エナジーであります。その貯蔵量はなんと、満タン時で54万kcal!
これは意外と「増槽」のイメージで合っているかもしれません。
また、体脂肪は「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に大別されます。
皮下脂肪の役割のひとつに「外部からの衝撃を緩和して内臓を守る」というものがあり、あながち「装甲」のイメージもマチガイではないといえます。
このように有益なはずの体脂肪ですが、適正値を大きく超えて蓄えられてしまった分はもはや本来の設計に合わないデッドウエイトです。「超巨大な増槽をぶら下げた戦闘機」、「装甲が厚すぎて超低速な戦車」・・・どちらも機能的とはいいがたいシロモノであります。
内臓脂肪と皮下脂肪
それでは、内臓脂肪と皮下脂肪の概略をもう少し見ていきたいと思います。
内臓脂肪と皮下脂肪
内臓脂肪とは
内臓脂肪は腹部の内臓周辺、腸間膜の周囲に位置する体脂肪であります。
おもな役割としては「臓器を定位置に支える」ことと「短期的なエネルギー貯蔵」が挙げられます。
どちらかというと女性よりも男性につきやすく、内臓脂肪が過剰な状態だとさまざまな疾病リスクが高まることがわかっております。
ざっと挙げるだけで糖尿病、高血圧、それに動脈硬化。内臓脂肪が過剰な状態ではガンや認知症の発症率が高まるという研究もあります。
この内臓脂肪が過剰な状態が男性に多い「内臓脂肪型肥満」であり、おもに内臓脂肪をターゲットとした食事コントロールなどの対抗戦術が「ダイエット」ということになります。
皮下脂肪に比べると比較的落としやすいとされるのが救いではありますが、そのためには「食生活の改善」と「運動量の増加」を柱とする日常生活のリファインが必須であります。
ゾックだったらフォノンメーザーやメガ粒子砲で一気にぶっ放してしまえるんでしょうが、あいにく数十万kcalのエネルギーをまとめて放出する手段は人間にはありません。
皮下脂肪とは
皮下脂肪は全身の皮膚の下にある体脂肪です。
おもな役割は「体温の保持」、「外部からの衝撃を緩和して内臓を守る」、それに「長期的なエネルギー貯蔵」です。
内臓脂肪と違って重大な疾病に至るリスクは低いとされている一方、比較的減らしにくいという特徴もあります。
皮下脂肪は男性よりも女性につきやすいとされます。これは出産をおこなう女性の腹部には余剰スペースが必要で、内臓脂肪を貯めやすくするわけにはいかないからです。
女性にはイヤな話でしょうが、臀部・大腿部・二の腕・背中・・・と、気になる箇所に皮下脂肪がつきやすいのは女性らしい遺伝情報が発現した姿ですので「そういうものだ」という割り切りも大事です。
世の多くの男性は女性に対して「TVに出てる〇〇ちゃんみたいに細く」なってほしいとは思っておりません。メーテル女史は美女ですがちょっと細すぎです。おそらくさまざまな罪悪感からストレスを抱えているのでしょう。
また「女性につきやすい」といっても「男性にはつかない」という意味ではありません。
以前の自分のように明らかに体型が肥大化している男性は内臓脂肪と皮下脂肪のどちらも大量についていると考えられます。
体脂肪を燃焼させるには
体内におけるエネルギー消費システムは、酸素を必要とする「有酸素系システム」と、酸素を必要としない「無酸素系システム」に大別されます。
体脂肪として蓄積された中性脂肪は酵素の働きで「遊離脂肪酸」と「グリセロール」に分解のうえ血中に放出され、全身でエネルギーとして消費されるわけですが、その際に「遊離脂肪酸」を使用するのが「有酸素系システム」です。
これが「体脂肪の消費には有酸素運動が適している」といわれる所以であります。
「有酸素運動は20分以上継続しないと意味がない」という意見は、運動開始から中性脂肪の分解酵素が活発に働き始めるまでの時間などを根拠としております。
しかし最近の研究では「20分以上」の連続運動は必須ではなく、休み休みの運動でも一定の効果があるとされております。
いずれにせよ体内のエネルギーは、
- 「使いやすい即効エネルギーであるブドウ糖」
- 「筋肉・肝臓に一時貯蔵されたグリコーゲン」
- 「貯蔵型である中性脂肪」
の順番に消費されるようにできており、体脂肪が消費される順位は後の方ということになります。
有酸素運動の前に無酸素運動(筋トレ)をおこない筋肉中のグリコーゲンを使ってしまうことで、さらなる高効率を目指すトレーニングを多くの同志が実践されております。
いちど貯めてしまった体脂肪はそう簡単には燃焼されません。ダイエットに長期戦の傾向があるのはこうした体脂肪の燃焼システムが大きく関係しております。
- 体脂肪は「増槽」であり「装甲」でもある
- 内臓脂肪は男性につきやすい
- 過剰な内臓脂肪は疾病リスクを高める
- 皮下脂肪は女性につきやすいが男性も無縁ではない
- 体脂肪がエネルギーとして消費される順番は後の方